障害年金を受けとれるための条件は3つありますが、どの条件とも初診日が関連します。
①初診日の条件 | 初診日にどの年金制度に加入していたか |
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②保険料を払っているかの条件 | 初診日の前日において、保険料の納付済期間や免除期間などが一定以上あること。 |
③障害の程度の条件 | 障害認定日(基本的に初診日から1年6ヶ月経った日)かその後重くなった日において障害の程度が1級・2級・(3級)に該当すること。 |
初診日がいつになるかで請求できる年金が障害厚生年金・障害基礎年金になるか、障害基礎年金だけになるか、変わってくることもあります。
また、初診日がいつになるかによって、保険料を払っているかの条件を満たせなくなるかもしれません。
障害年金における初診日は、障害年金の請求に大きな影響があり、とても重要なことになります。
本記事では、「初診日」について、どのように決められるか、どのように証明するか、をご紹介いたしますので、ご参考になさってください。
初診日とは
初診日とは、障害の原因となった病気やケガに対して「初めて医師の診療を受けた日」です。
「初めて医師の診療を受けた日」といっても、病院の受診の経緯や病歴は様々で、迷ってしまうこともあるかもしれません。
障害の原因となった病気やケガに対して「初めて医師の診療を受けた日」の具体的な例として、以下のようなものがあります。
①初めて診療を受けた日(治療行為または療養に関する指示があった日)
②同一の傷病で転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日
③過去の傷病が治癒して同一傷病で再度発症している場合は、再度発症して医師等の診療を受けた日
治癒があったら、再度発症して診療を受けた日が初診日となります。
④傷病名が確定しておらず、対象の病気やケガと異なる傷病名であっても、同じ傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象の病気やケガの初診日
例として、
頭痛や強い倦怠感を感じ最初に内科病院(A)を受診し検査などしても異常が見つからず、精神科の病院(B)を紹介され、うつ病の診断がつきました。
その場合、病名の診断がついた精神科病院(B)で最初に診療を受けた日ではなく、内科病院(A)受診時の症状が同じ傷病となれば、内科病院(A)で最初に診療を受けた日が初診日と認定されることになります。
また、難病などで、いくつかの病院で診療を受けたが確定診断がでず、専門医で確定診断がついたケースなどでも、専門医ではなく、その前のいくつかの病院の初めて診療を受けた日が初診日として認定されるということもあります。
⑤障害の原因となった傷病の前に「相当因果関係がある」と認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
多い事例として
糖尿病を患っておりC病院を受診していましたが、眼のかすみや視力低下などを感じD眼科医を受診したところ糖尿病性網膜症と診断されたというケースです。この場合は、障害の原因となった糖尿病性網膜症に相当因果関係がある糖尿病の症状により初めて受診したC病院の初診日となります。
⑥先天性の知的障害(精神遅滞)は出生日
※ただし、頭部外傷や高熱などが原因で知的障害となった場合は、原則として初めて病院を受診した日を初診日として取り扱います。
⑦先天性の心疾患、網膜色素変性症、発達障害などは、具体的な症状が出現し、初めて診療を受けた日
⑧先天性股関節脱臼は、完全脱臼したまま生育した場合は出生日が初診日、青年期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、発症後に初めて診療を受けた日
治癒とは?
治癒には、医学的な治癒だけでなく、障害年金上の治癒「社会的治癒」も含まれます。
社会的治癒とは
- 症状が安定して療養の必要がない
- おおむね5年以上にわたり通常に日常生活や就労ができている
この2つを満たすと該当します。
「症状が安定して療養の必要がない」とあるので、医療機関の受診がない期間があるか確認してみましょう。
ただ、症状が安定せず療養の必要があるのに、金銭的な理由や面倒だということで医療機関を受診してなかったのは含まれません。逆に、症状が安定していて予防的に医療機関の受診を継続していたという場合には、症状が安定して療養の必要がないと認められることもあります。
「社会的治癒」について、障害年金を請求する側で「社会的治癒」を証明し申し立てし、日本年金機構に認められて「社会的治癒」があったということになります。
相当因果関係があるとは?
障害の原因となった傷病の前に「相当因果関係がある」傷病、というのは、「前の疾病や負傷がなかったら、後の疾病は起こらなかったであろう」ということです。
前は「疾病や負傷」であるのに対し、後は「疾病」のみとなっているので、何かの病気によりフラフラしてしまってケガをしても、前の病気と後のケガに相当因果関係があるとはなりません。
「相当因果関係がある」ケースとして、次のものが示されています。
- 糖尿病と、糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉鎖症)
- 糸球体腎炎(ネフローゼを含む)、多発性のう胞腎、慢性腎炎に罹患し、その後に慢性腎不全になったもの
- 肝炎と肝硬変
- 結核の化学療法による副作用として聴力障害が生じた場合
- 手術等による輸血により肝炎を併発した場合
- ステロイドの投薬による副作用で大腿骨無腐性壊死が生じたことが明らかな場合
- 事故または脳血管疾患による精神障害がある場合
- 肺疾患に罹患し手術を行い、その後呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生の期間が長いものであっても相当因果関係ありとして扱う
- 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることが確認できたものは、相当因果関係ありとして扱う
一方、「相当因果関係なし」として示されているケースは次のとおりです。
- 高血圧と、脳出血・脳梗塞
- 糖尿病と、脳出血・脳梗塞
- 近視と、黄斑部変性・網膜剥離・視神経委縮
健康診断を受けた日は初診日になるの?
初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日として、健康診断を受けた日(健診日)は初診日として取り扱わないこととされています。
ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の受診状況等証明書が得られない場合で、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合については、障害年金を請求する人から、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を添付して健診日を初診日とするよう申立てがあれば、健診日を初診日として認めることができる、とされています。
初診日はどうやって証明するの?
初診日は、障害の原因となった病気やケガの初診の医療機関に、カルテ(診療録)に基づいて初診日等について記載した「受診状況等証明書」を作成してもらい証明します。
初診の医療機関から転院なく、同じ医療機関で受診している場合は、「受診状況等証明書」は必要なく、診断書(障害年金請求用)に初診日を記載する欄がありますので、それで証明することになります。
受診状況等証明書を作成してもらったら、記載された内容を確認してみましょう。
記載された内容に、前医の記載があったら、想定していた初診の医療機関よりも前に、同一の傷病で別の医療機関を受診されていた可能性があります。紹介状を持って初診と想定していた医療機関を受診されていたなら、紹介状を添付してもらいましょう。
また、記載された前医に「受診状況等証明書」を作成してもらいましょう。
初診の医療機関に「受診状況等証明書」を作成してもらえないことがあります。
- 初診の医療機関が廃院してしまっている。
- 初診の医療機関にカルテが残されておらず作成してもらうことができない。
などの理由によります。
カルテの保存期間が、「完結の日から5年間」保存しなければならないと定められているため、診療を受けなくなってから5年たつと廃棄してしまう医療機関が多いためです。
初診の医療機関に目星がついていれば、初診の医療機関に電話で「受診状況等証明書」を作成いただけるか(カルテが残っていて初診日を証明してもらえるか)確認してみましょう。
「受診状況等証明書」を書いてもらえない場合はどうすればいいの?
「受診状況等証明書」は必ず提出が必要です。
もし初診の医療機関で作成してもらえない場合は、「受診状況等証明書」を作成してもらえる一番順序が前の医療機関に「受診状況等証明書」を作成してもらいます。
1 | 初診の医療機関で作成不可の場合 → 2番目に受診した医療機関へ依頼
初診の医療機関に対して「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成する |
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2 | 2番目の医療機関でも作成不可の場合 → 3番目の医療機関へ依頼
2番目の医療機関に対して「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成する |
3 | 3番目の医療機関でも作成不可の場合 → 4番目の医療機関へ依頼
3番目の医療機関に対して「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成する |
このように、「受診状況等証明書」を作成してもらうことができなければ、次に受診した医療機関に作成してもらいます。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」と受診状況が確認できる資料も必要になる
受診状況等証明書を作成してもらえない医療機関があったら、作成してもらえなかった医療機関ごとに「受診状況等証明書が添付できない申立書」を請求する人が作成し、受診したことが確認できる資料を添付します。
受診状況等証明書で受診を証明できなかったので、他の資料で受診を証明するということです。
受診したことが確認できる資料として、以下のようなものが示されています。
- 身体障害者手帳・療育手帳・ 精神障害者保健福祉手帳
- 身体障害者手帳等の申請時の診断書
- 臨床調査個人票
- 交通事故証明書、交通事故等が掲載されている新聞記事
- お薬手帳や糖尿病手帳
- 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
- 入院治療計画書(クリニカルパス)、退院時要約(サマリー)
- 事業所等の健康診断の記録
- 母子手帳
- 健康保険の給付記録(レセプトも含む)
- お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券 (可能な限り診察日や診療科が分かるもの)
- 小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表
- 盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証書
- 第三者証明
また、受診したことが確認できる資料も、受診しているだろうと推定できる資料にすぎないため、1点添付すればいいというものではなく、なるべく多くの資料を添付して、初診日はここに違いないと証明していきます。
5年以上前に初診日について申立てしている
また、請求手続きから5年以上前に、「初診日はいつである」と医療機関に申立てしていることがカルテなどに残っていれば、それも証拠の一つとして採用してもらえますので、2番目以降の医療機関で「初診日はいつである」「いつから●●病院を受診していた」などを申し立てていないか確認し、記録に残っているようであれば、受診状況等証明書などに記載してもらいましょう。
本記事では、初診日の判断や、初診日の証明についてご紹介してまいりました。
初診日はいつになるか悩まれたり、受診状況等証明書を作成してもらえずお困りでしたら、社会保険労務士高橋直樹事務所までご相談ください。